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講演会「徳島大学における生物系教育研究の変遷
〜分子集合体研究の結びつき〜」
(徳島大学技術士会第1回年次大会記念講演)
講師: 松木 均氏〔徳島大学 徳島大学生物資源産業学部長〕
日時: 2023年4月8 日(土) 15:15~ 16:40
場所:徳島県関西本部会議室+Web
1.自己紹介
静岡に生まれ、九州大学において学部・大学院で化学を専攻し、1990年に徳島大学工学部に助手として赴任した。1997年に米国ユタ大学医学部で在外研究員、2007年に徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授、2017年に徳島大学大学院創成科学研究科教授。専門分野は、分子集合系を中心にした生物物理化学、特に高圧力研究に力を入れている。
2.工学部生物工学科と生物資源産業学部
1980年代、バイオテクノロジーが注目されたことを背景として、1988年に理系学部を学際的に融合した「生物工学科」が、工学部内に全国3番目の生物工学系の学科として誕生した。その後、2010年代始めに徳島県からの農業系学部の設置要望を契機として、2016年に農工連携により、農林水産、微生物、ウイルス等の地球上における生物資源に関する研究を行う「生物資源産業学部」が、生物工学科に取って代わる形で徳島大学内に設置された。
3.脂質集合体の熱力学的研究
生体分子(核酸、タンパク質、糖質、脂質)の中で、脂質のみが弱い相互作用で自己組織化し、膜構造の分子集合体(生体膜)を形成する。脂質は生体分子中で、最も構成成分が多く(脂質多様性)、脂質の集合体は置かれた環境に鋭敏に応答して、その集合体(膜)状態を変化させる。この性質が生物の環境適応性に大きな役割を果たしている。様々な生体膜脂質が形成する膜状態の環境依存性を、温度、圧力、濃度を変数として構築した熱力学的状態図を用いて明らかにしてきた。最近は、有機合成の手法を取り入れ、天然脂質に分子構造が類似した非天然脂質に対しても研究を拡張している。
4.生物資源産業学部の近況
県内の3箇所(石井、鳴門、新野)にキャンパスに有し、バイオ系新産業の創出を精力的に行っている。学部付属農場を有している石井地区では、6次産業化製品としての「徳大ハム」の製造や、コオロギベンチャーとして起業した株式会社グリラスが「食用コオロギパウダー」を生産している。今夏には、オープンイノベーションのさらなる推進による地域活性化を目指した新棟(ヴォルテックス棟)が竣工する予定である。