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講演会「技術者コミュニティの可能性と期待」

              (徳島大学技術士会設立記念講演)

    

講師: 山中英生氏〔徳島大学 社会産業理工学研究部長〕

日時: 2022年4月2 日(土) 15:00~ 16:30

場所:TeamsによるWeb講演会

1.自己紹介

 京都に生まれ、実家は京都清水焼の原料屋。大阪万博で交通に興味を持ち、京都大学の交通土木工学に進んだ。1989年に徳島大学に赴任し、住民参加や合意形成の研究に携わるようになる。

 1996年にロンドン ウエストミンスター大でパッケージ・アプローチの研究をし、1998年からは土木学会のグループでPIや参加型計画PCM手法の研究を始め,2004年からはMITに留学していた研究者とコンセンサスビルディングなど海外の合意形成手法の日本への導入を研究してきた。

 

2.コンセンサスビルディング(社会的合意形成の手法)

 社会的な合意形成を図るには、民主的な決定が必要であるが,定まった方法はない。民主的決定方法には官僚的方法、社会運動的方法、政治的方法、協調的方法があって,歴史的に変遷している。問題の多様性が高く、利害の相互依存性も高い現代では,その中の協調的方法(お互いに納得するまで話し合う)が有効とされている。

 協調的合意を成功させるのには3つの要素が必要である。1つ目は公正と感じるプロセス。2つ目は利害に基づく交渉。3つ目は中立の第三者の関与である。中立的第三者は調整役となる専門家であり、参加者を重要な課題と目標に集中できる様会議をデザインするファシリテータ、第三者を仲介者として交渉としての援助、交渉の場をデザインするメディエータがある。

 コンセンサスビルディングでは関係者分析(ステークホルダー分析)がまず大切なプロセスになる。関係者分析は、雪だるま式サンプリング(ヒヤリングした関係者がさらに関係者を紹介してヒヤリングが増えていく)で個別に課題への関心をヒヤリングする。この時、情報の守秘、中立的立場を関係者に明確にすることで,担当技術者の中立性や専門性への信頼を構築することができる。

 

3.トランジション・マネジメント(社会改革を目指す手法)

 関係者の合意を目指すとなかなか改革が進まない。そこでオランダで始まったトランジション・マネジメント(TM)手法に着目している。これは先駆者(フロントランナー)の挑戦的な活動を促すことで,未来社会を体現して,社会を変えていこうといする手法で,今ある当たり前をなくし,未来の当たり前を作るというXカーブ図で表現される。

TMでは、フロントランナーのワークショップを開き、未来ビジョンを描き,仲間が増えていくような活動を進める。このような方法はLQCアプローチ(Lighter、Quicker、Cheaper)としても知られている。LQCはコミュニティ(仲間=活動者,ユーザー,スポンサー)づくりにつながる。

 TMに必要な要素の研究で金沢市を調べた。金沢では自転車対策でトランジションが起きていて自転車が安全な道を実現している。その活動の鍵は学習と人的なネットワーク作りで,その結果“実践コミュニティ”を形づくることが重要だという結果になっている。

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