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講演会「これからの洪水災害対策について

~流域治水とグリーンインフラの活用~」

(徳島大学技術士会第2回講演会)

    

講師: 武藤裕則氏〔徳島大学理工学部長・教授〕

日時: 2023年2月4 日(土) 14:00~ 17:00

場所:徳島県関西本部会議室およびzoomによるWeb講演会

1.自己紹介

 大阪生まれで英国のブラッドフォード大学に行くまで大阪にいた。1992年から英国ブラッドフォード大学で助手を務め、徳島大学へは2010年から赴任している。2016年徳島大学大学院理工学部の教授。2022年4月に徳島大学理工学部長に就任した。専門は土木工学(水工学、河川工学)。

2.近年の水災害

 近年、雨量が増え、毎年のように数10人規模で水災害で死者が出ている。ハザードマップは大きめのハザードを設定して表現しているが、近年はその状況が起こり得る。2018年7月の西日本豪雨では220人の方が亡くなっている。倉敷市の真備町では高梁川で破堤し、住宅等は1階は完全に水没していた。過去には高梁川周辺は水田ばかりであったので、氾濫水が住宅等を水没させることはなかったが、最近は川の近辺に住宅が多く建っていて、被害にあっている。

 水災害防止には河川整備と流域の調和が必要である。

3.流域治水

 流域治水には「2つの全て」が必要である。1つ目はあらゆる関係者が協働することである。2つ目は流域全体を考えることである。

 流域治水は、「ながす」「ためる」「とどめる」「そなえる」の4つの方針で展開されている。

 例えば、滋賀県の流域治水の考え方では、堤防整備などで水を安全に「ながす」。調整池・水田等で水を「ためる」。土地利用規制等で水を「とどめる」。4つ目は水害履歴の調査等で水害に「そなえる」情報の取得等である。

 徳島県のケースでは、河川の整備・維持管理を行い水をスムーズに「ながす」。懸念される個所での開発行為を制限し、氾濫原を「とどめる」。浸水想定区域での避難計画の作成で、水害に「そなえる」教育の実施。河川等出水警戒区域における建築制限で、住宅等建設を「とどめる」。農地・森林等の浸透力等で水を「ためる」。河川に係る情報収集・分析で、水害に「そなえる」という方針で流域治水を展開している。

4.洪水対策への水田の活用

水田は人が作ったグリーンインフラである。又、人口減少のため、宅地転用が減速している為、水田の減少が少なくなっている。水田は保水量があるので洪水を調節できる。その点で、水田は洪水対策として利用可能である。

 今後も気候変動により、ハザードマップに設定されている規模の洪水は起こり得る。危険度の高い地域の住居建設を回避する方法もある。又、水田等グリーンインフラの保水力を利用した治水も有効である。

 

                                         以上

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